化学療法中の食事について、誤解されていませんか?


By Arlene-Frances Wu | Senior Nutritionist
がん治療として一般的な化学療法ですが、治療中は体に大きなストレスがかかり、栄養ニーズも大幅に増加します。その一方で、「何を食べたらいいのか」「何は避けるべきか」についてお悩みの患者さんが多く見られます。よくある質問には次のようなものがあります。
❓「化学療法中に牛肉は食べてもいいの?」
❓「カロリーが高いインスタントラーメンは食べても大丈夫?」
❓「外食しても大丈夫?」
今月の健康だよりでは、このような疑問に対して、役に立つ栄養アドバイスをお届けします。
化学療法中に牛肉は食べていいの?

化学療法では、タンパク質の損失、免疫力の低下、栄養不足が起こりやすくなります。また、白血球の減少や口腔・消化管の損傷、貧血の原因にもなります。だからこそ、タンパク質と鉄分が豊富な食品を摂ることが重要です。牛肉はその代表格です。
赤身肉が、がんリスクとなるという研究もありますが、多くの場合、そのリスクは「調理方法」に起因しています。
有害な化合物(ヘム鉄、ニトロソアミン、多環芳香族炭化水素(PAHs)、ヘテロサイクリックアミン(HCAs))は、主に高温調理(揚げる・焼く)によって生成されます。
✅ ヘム鉄やニトロソアミンの影響は、食物繊維をしっかり摂ることで軽減可能です。
✅ PAHsやHCAsは主に高温調理時に生成されます。
👉 ベストな方法:赤身の部位を選び、揚げ物や直火焼きを避け、中までしっかり火を通すことで、栄養価を保ちながら体に負担をかけない食材になります。
インスタントラーメンは手軽だけど高カロリー。食べても大丈夫?

エネルギー不足や食欲不振の際、インスタントラーメンに頼りたくなることもありますが、栄養面では注意が必要です。
❗ 塩分・脂質・添加物が多い
❗ 免疫力が落ちている体には、栄養が不十分
たまに食べる際は、以下の工夫を取り入れましょう。
✅ 減塩タイプや無添加のものを選ぶ
✅ 原材料表示を確認して、保存料・飽和脂肪酸が多すぎないかをチェック
✅ 野菜・豆腐・卵・鶏肉などを加えて栄養バランスを補う
✅ 食物繊維入りや全粒粉麺を選ぶと腸内環境にも◎
「健康志向」のインスタント麺を選んだとしても、適度な頻度と栄養バランスを意識した組み合わせが大切です。常食には向きません。
「外食」しても大丈夫?
外食=不健康と考えがちですが、賢い選択をすれば、栄養をしっかり摂りながら安全に食事を楽しむことができます。
ポイントは、タンパク質・良質な炭水化物・食物繊維を含むメニューを選び、低脂肪・減塩・蒸し・煮る調理法を意識することです。
以下は献立の一例です。

ゆで卵+トマトの全粒粉サンド+無糖植物性ミルク+ブルーベリー
✔️ 食物繊維豊富な全粒粉で血糖値安定
✔️ 抗酸化物質豊富なブルーベリー
✔️ 無加糖の植物性ミルクで消化にやさしい

牛肉または豚肉入りの野菜フォー+ホットレモンウォーター
✔️ 野菜とタンパク質の入ったやさしい温食
✔️ 牛肉は鉄・亜鉛・ビタミンB群が豊富
✔️ レモンウォーターで消化促進とビタミンC補給

豆花(トウファ)+キウイ
✔️ 豆腐の植物性タンパク質は消化が良い
✔️ キウイは食物繊維とビタミンCが豊富
✔️ さっぱり・低脂肪な軽食として最適

鶏むね肉とセロリ・カシューナッツの炒め物+青菜のおひたし+ごはん
✔️ 鶏肉とカシューナッツでタンパク質と食物繊維のバランス◎
✔️ 軽く加熱した野菜で栄養価キープ&脂質控えめ
✔️ ごはんでしっかりエネルギー補給
化学療法中は「避けること」よりも「賢く食べること」が大切です。
制限ばかりにとらわれず、日常の食材をどう組み合わせるかで、食事が回復の力になります。
一人ひとりの状態に合った食事は、専門の管理栄養士に相談するのがベストです。ネット上の噂や情報に惑わされないようにしましょう。
賢く食べて、よりよい回復を。
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